【水はけ改善】無農薬での安全な果樹栽培講座のまとめ 水脈整備
人にも環境にも優しい安全な農法を広げる試みとして、平成28年4月23日、無化学肥料・無有機肥料・無化学農薬での安全な果樹栽培基礎講座が、めぐまこの家で行われました。
講師は、木村式自然栽培を実践されている、自然農園「もと屋」の元屋氏。
土を再生させるために重要なポイントとなる、水脈改善について、丁寧に教えて頂きました。
家庭菜園を細々としているだけの私なりの解釈になりますが、地力をあげ、自然の力を沢山貯えた野菜を作るための参考になれば幸いです。
もくじ
※ 本ページでご紹介します内容の多くは、今回使用した土地に限定した方法です。気候風土、地形、季節により状況は変化し、必要な事は異なります。個々の土地に合った適切な方法については、講師の元屋氏から直接指導を受けてください。
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大地の水脈整備は地力向上の基礎
地力というのは化学農薬・化学肥料を使用する慣行の稲作栽培でも必要な事。
実は化学肥料をあげるから育つ=化学肥料が稲の全ての栄養源、ではなく、施肥設計では地力が75%、残り25%が施肥だそうです。
地の力=土の力が作物の出来を大きく左右するということです。
そして慣行栽培で必要とされる地力が75%であるならば、無肥料で育てる自然栽培はそれ以上でないといけない、と講師の元屋氏は話しておられました。
では地力はどうすれば上げられるのでしょうか?
まずは地力の乏しい、悪い土からご紹介させて頂きます。
作物が育たないグライ化した土
過去に化学肥料と化学農薬を使用していた休耕地の土は、掘ると青く硬い土の層にあたることがあります。それをグライ化した土と呼んでいます。
下の画像は、グライ化した地層を地表近くで確認できるかなり問題のある土地の例です。
赤丸の中に灰色の部分が確認できるでしょうか?
これは土中に水がしみ込まず地表に溜まったことから雨水が泥と混ざり泥水となった跡になります。
また、この場所からほんの数十センチのところに下の画像のように、泥水が渇き、ひび割れた場所がありました。
こういった土は、地面を硬くしめられた宅地でもよく見られる状態です。
そしてこの場所を掘ってみますと、青色の土が出てきます。
この青い土がその下の層への水の流れを遮断しているそうです。そしてこのグライ化層の事を、【肥毒の層】と元屋氏は呼ばれていました。
この肥毒の層と呼ばれるグライ化した土の層は非常に固く、また、腐敗臭がし、冷たく冷えています。しかしこの層をどうにかしませんと根がはれず、作物は育ちません。
水脈整備とは空気も運ぶ流れをつくること
水脈を整備する意味は、水だけなく空気の流れを大地に作ることにあります。
ちなみに、講師の元屋氏は【氣】という字を使用し、【空気】ではなく【空氣】としています。奥深い理由があるのでしょうが、それはまた別の機会に伺ってみようと思います。
話を戻します。
講師の元屋氏はストローを使い説明をして下さったのですが、ストローを縦に持ち、上部から水を流すと水はストロー内を流れますが、ストローの下を潰して上部から水を流しても、ストロー内の空気が水の侵入を防ぎ、なかなかストロー内に入ろうとしません。
それが土中でも同じように起こっている、というのです。
下の図をご覧ください。
グライ化した土に遮られて停滞した雨水や空気が土中に存在し、新しい流れをせき止めています。それが腐敗をさらに促進します。
その停滞してしまった流れを動かし、土を生き返らせるために水脈を整備するのです。
水と空氣の流れを作る明渠(めいきょ)の位置
今回利用した土地での明渠(めいきょ)の位置は下の図のようになりました。
明渠(めいきょ)は、畑の排水を良くするために、地上に作る排水路のことです
この土地は上と右側の2方向が山側斜面となり、左と下側の2方向が谷側斜面になる棚田になります。
そうすると、水と空氣は左と下側の2方向には流れる道は確保されていることになり、逆に山側斜面を持つ上と右側の2方向は斜面により流れが遮断されていることになります。
その土地の土の状態や周りの状況によるのですが、今回は右側の一部から上側に沿って明渠(めいきょ)を造り、左側の谷側に流れる水脈を整備することになりました。(※土地によって必要となることは違います。また、判断には経験が必要となります。)
そうすることで、グライ化した地層に阻まれた水と空氣の土中での流れを確保することができます。
明渠(めいきょ)を土で整備する意味
明渠(めいきょ)を土で整備する目的は、水と空氣の流れを作り出し土を再生させ、地力を上げることにあります。
では下の図をご覧ください。
明渠(めいきょ)を造ることで、グライ化した地層に阻まれ行き場を失った雨水や空気の出口が出来ます。
出口が出来れば土中に停滞していた水や空気が次第に流れ始めるため、新しく地表に降った雨が空氣とともに地中に流れるようになります。そうして水と空氣が土中を通る水脈ができるのだそうです。
下の画像をご覧ください。見づらいかと思いますが、今回使用した土地を矢印の方向に縦に掘った点穴です。
赤丸の下がグライ化した肥毒の層になります。赤丸の上の土に比べ、灰色っぽいのがわかるでしょうか?そして赤丸の上方にある青丸の中に、水がしみ出しているのが確認できます。
拡大したものが下の画像です。
縦穴の側面から水がしみ出しているのがわかるでしょうか?
もしこの点穴の側面がコンクリートで覆われていた場合、水と空氣は出口を失うことになり、流れが遮断されます。ですから、コンクリートでは【水脈整備】ができません。
水脈整備 明渠(めいきょ)の造り方
実際に明渠(めいきょ)を造っていきます。
まず明渠(めいきょ)を造るときに重要なのは、自然に習い、【急】を避け、緩やかな自然な流れを造ることだそうです。
山側斜面からは間隔をあける
今回の土地のように山側斜面を持つ土地は、斜面と明渠(めいきょ)間にある程度の距離を設けると良いそうです。そうすることで斜面を下ってきた雨水の影響を直接受けることがなくなるのです。
明渠(めいきょ)の側面は斜めにする
次に下の図をご覧ください。明渠(めいきょ)側面を直角に近い状態で造りますと、水は明渠(めいきょ)に急に落ち込むことになり、上方の角を削ることになります。
その削られた土は雨水と混ざり泥水となり、水脈を詰まらせることになりますから、溝は下の図のように斜めに掘り下げると良いそうです。
明渠(めいきょ)の底をきれいに均さない
なお明渠(めいきょ)の底はキレイに均さず、荒く掘った状態のままにするのが良いそうです。そうすることで底の土が硬くならず、また、土が空気と水に触れる面積を稼ぐことができるからです。
下は実際に掘った明渠(めいきょ)になります。明渠(めいきょ)は手前から奥へ伸び、左手方向に曲がり、谷側斜面へ抜けます。
なお明渠(めいきょ)に勾配を付け、川のような水の流れを造る必要は無いそうです。というより、流れを造ると土を流したり、泥水を作ることになり良くないとのこと。
明渠(めいきょ)にできる【流れ】とは、明渠(めいきょ)内の水量から生じた高低差により、出口側に自然に起こるものだけで良く、手前は少し浅くなっていますが、残りはほぼ水平に整備されました。
グライ化層を貫く点穴を掘り、明渠の働きを良くする
畑の地表からある程度の深さまでは、明渠(めいきょ)を造ることで側面への水と空氣の流れができました。
しかし地力を上げるには、地表から数十センチ下にある肥毒の層の下への流れも造る必要があります。
そこで畑に数カ所と、明渠(めいきょ)の働きをより効力のあるものにするために明渠(めいきょ)にも2か所、肥毒の層を貫き、水を縦浸透させるための点穴を掘ることになりました。
そうすることで大地は水をたっぷりと吸うことができ、干ばつに強い土地にもなるそうです。
明渠(めいきょ)の曲がり角には点穴を設ける
明渠(めいきょ)は水と空氣が滞らず緩やかに流れて行けば良いのですが、曲がり角は流れが滞りがちになります。
そこで下の図のように点穴①を掘り、地中への流れを造ってあげます。
また、講師の元屋氏の判断で点穴②も掘り、その他にも数カ所ある植樹予定場所との中間にもいくつか点穴を設けることになりました。
なおこの点穴についても土の状態からの判断となるため、その土地の状態により、掘る位置と数は違ってきます。
ただ明渠(めいきょ)の曲がり角に点穴を設けること、掘る深さはグライ化層を貫くまで、の2点についてはどこも同じです。
土地によってはグライ化層を貫くのに大変苦労なさるかと思いますが、頑張ってください。地力回復にはかかせない作業です。
ちなみに点穴堀りには↓のような穴掘り専用の道具があると大変便利です。
土の状態は土中の温度でわかる
土の状態を確認する為、点穴②で土中の温度を測りました。
表示された温度が確認できますでしょうか?反射して見づらいかと思うのですが、上部が14.8℃、下が13℃になっています。しかし、下の温度計は小数点以下の表示が無く、14℃を表示した瞬間もありますので、限りなく14℃に近い温度だと思われます。
そうしますと、ほんの10㎝程の距離で約1度温度が違うことになります。
上部も下部も同じ温度になるのがベスト
土中の温度を測る、これは土の状態を知る一つの手段だそうです。
本来であれば、地表からは太陽の熱で土は温められ、地中からは地熱によって土は温められるため、土中はほぼ同じ温度になるのだそう。
しかし水と空氣の流れが停まった土は冷たく冷えています。目視ですぐに確認できる明らかなグライ化層が無い場合でも、土中の温度測定は土の状態を知る有効な手段の一つになります。
明渠(めいきょ)と点穴のカバーリングで終了
これで最後になるのですが、明渠(めいきょ)と点穴に、雨水の影響を直接受けないようにするためのカバーリング=土壌被覆を以下の順に行いました。
- 木の枝を適当な長さに切る
- なるべく複数種類の材料を使用する
- 自然に習い、枝と葉の比率を同じになるようかぶせる
- 表面をもみ殻などで軽く覆う
木の枝を適当な長さに切る
↑枝をカットして下さっているのが講師の元屋氏です。
土壌被覆中の明渠(めいきょ)です。カヤや枝などを流れに沿うように入れていきます。
こちらは畑の一部に掘られた点穴になります。明渠(めいきょ)と違い、縦に入れて(さして)いきます。
最後に明渠(めいきょ)と点穴の上部からもみ殻をパラパラと撒きます。
ちなみに表面を軽く覆うものは竹や枝葉などでも良いそうです。今回は準備のしやすさや、時間的なものも考慮しもみ殻を使用されました。
なお画像を見て頂きますと、もみ殻がまばらに撒かれているのがわかるかと思います。こうすることで明渠(めいきょ)内に空氣の流れが出来、自然に近い状態に持っていくことができるそうです。
・・・こうして今回の講座は終了しました。
我が家の空き地には、水はけを良くするため、枝と小石などで暗渠(あんきょ)を設けてあるのですが、改めて『水はけ』の重要性を教えて頂き、作っておいてよかった~と思いました。
同じ団地内の他のお宅とは明らかに生えている植物の種類が違いますしね。青々として夏も涼しい(#^.^#)
ということで、宅地にも有効ですよ☆
ちなみに、富山県小矢部市で運営されていた『めぐまこの家』は、2018年6月に石川県羽咋郡に移転し、オーガニック民泊に生まれ変わりました。
化学物質過敏症患者が療養するための活動は引き続き行っておられますが、患者が収入を得、自立する場所とならないか現在模索中です。
詳しくは下記記事をご一読いただけますと幸いです。
>> オーガニック生活の方限定民泊、めぐまこの家【MCS避難所にも】
最後までお読みいただきありがとうございます。安全で美味しい果物や野菜が、たくさん採れますように。
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