自然素材の家でもシックハウスに!材料と揮発成分には注意
白い塗り壁や無垢の木が敷かれた床などに憧れ、また子供が健康に育つ家を求めて自然素材で自宅を建てられる方や、リフォームなさる方が増えています。
しかし自然素材は確かに見た目は気持ち良いのですが、実際に健康になったか、またはアトピーや喘息などの身体的問題が全て解決されたか、となりますとそうでもない、という方が多くおられるようです。
なぜなのでしょうか?
それには、シックハウス症候群で大きく問題となったホルムアルデヒドなど、毒性を持つ化学物質を含む建材や、建て方(工法)、自宅周囲の環境も大きく作用するのですが、もう一つ大きな、そして見落としがちな原因が、「自然素材」になります。
シックハウス症候群については下記のページにて詳しくご紹介しております。
>> シックハウス症候群を予防する|24時間換気方式の選び方
こちらのページでは、そもそも自然素材の建材は健康上問題が無いのか?24時間換気システムが不要の工法や大臣が認定した工法で時にシックハウス症候群の症状が出るのはなぜなのか?をご紹介していきます。
ご家族が健康に過ごせる家づくりの参考になれば幸いです。
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自然素材と言われる建材も多種多様。きちんと吟味を。
現在自然素材として使用されている建材には大変多くの種類があります。そしてそれらの中から建材を選ぶ際に判断材料の一つにしてほしいのが、その建材の材料が自然素材だけなのか、という点です。
本当に自然素材?
建築基準法が改正され、シックハウス対策が行われるようになってから随分時間が経ちました。
そして現在では、壁の材料一つ見ても大変多くの商品が出ています。しかし、自然素材が含まれた建材を、あたかも自然素材のみで作られているかのように思わせる販売ページを見かけることも多くあります。
またその際には、実際に施工されたお客様の声が載せられている事が多いのですが、プラスの事ばかりでマイナスの事は載せられていません。
新しい住まいが、その方にとって以前と比べて環境が良くなった場合は体調は良くなりますし、ほぼ変わらなければ変化が無い、または環境が悪くなった場合には以前より体調が悪くなることがあります。(※最初は良くても、数か月後に新しい物質に反応を始める場合もあります)
ですからサイト上に寄せられているお客様の声は、あくまでもその方が入居後比較的早い時期に感じている以前の住居との差であり、あなたや、あなたのご家族にそのまま当てはまるかと言いますと、そうではないことがあります。後で後悔しないためにも、その意見は参考にしつつも、必ず現物を自身で確認してから選ぶようになさって下さい。
珪藻土はバインダー(接着剤)が必要
私は化学物質過敏症患者を支援する目的の為に自宅の一部を自然素材でリフォームなさった方を存じておりますが、その部屋の壁に使われた建材、珪藻土(けいそうど)は、窓開け換気を常に行っているにも関わらず、施工から2年が経過してもなお私には強い刺激臭が感じられ、とてもその場には長居できない状態でした。
これからも新しい建材が出てくるのでしょうが、珪藻土に関しては、バインダー(接着剤)無しには壁材として利用できません。そしてそのバインダーとは、化学物質になります。ですから、壁の建材を選ばれる際にはどの商品であっても、自然素材だけで作られているかを必ず確かめるようになさって下さい。
新築時には漆喰(しっくい)がお勧め
私は一般的な建材で新築した自宅でシックハウス症候群になりました。(床は無垢材です)建築後4か月経った頃に建材からのVOC(揮発性有機化合物)に耐え切れなくなったのです。
そして一番つらいと感じた居室の壁と天井に貼ってあったビニールクロスを自身で剥がし、下地の石膏(せっこう)ボードの上に、田中石灰工業のタナクリーム(消石灰クリーム)を塗りリフォームしています。
なおビニールクロスを剥がした効果は絶大で、施工完了から1,2か月で体調にかなり良い変化がありました。(その他、クローゼット内の棚に使われていた合板の撤去や、家具などの廃棄も行っています)
ただ本当は壁材には漆喰(しっくい)を使いたかったのですが、石膏ボードまでもを剥がし下地を自分で作るのは無理ですので私は諦めました。ですが新築なされる場合や、調湿効果も求めるのであれば土壁に漆喰仕上げをお勧めします。
逆に言いますとタナクリームでは宣伝にあるような調湿効果は特に感じませんでした。私の入居は12月になり、春先にはリフォームを開始しましたので冬期間でしかビニールクロスとの違いを比べられませんでしたが、冬期間の湿度はどちらも30%台です。
最近では土壁にも接着剤が使われる場合があるようです。気を付けて下さい。
また、壁材には手すきの和紙などを利用する方法もありますが、非常に高価ですし、紙は化学物質をよく吸い込みます。さらに汚れが付いてしまうと取ることも出来ませんし、耐久性等も考えますと、私はあまりお勧めしません。(タナクリームは醤油が付いたとしても、少しずつ薄くなります。・・気長に待つ必要はありますが)
次に天然の木材からのVOCについてご紹介いたします。自然素材は安全、害は無い、というのは間違いですから注意してください。
天然の木の中には現代の住宅事情にそぐわない種類も
天然の木材からもVOC(揮発性有機化合物)は放出されています。そして屋内の建材として利用されることの多いヒノキ材やスギ材からも当然VOCは放出されており、三重県の資料「木質材料からの揮発性有機化合物の放散」によりますと、ヒノキ材ではTVOC(総揮発性有機化合物)の50~80%がα-ピネンになり、杉材からはセスキテルペン類が主となっております。
植物が作り出し放出するテルペン類には、α―ピネンを含むモノテルペン、セスキテルペン、ジテルペンの3種類があり、その中で最も酸化しやすいのがモノテルペンになります。
なおモノテルペンには、柑橘類に含まれるリモネンや、ラベンダーやネロリなどに含まれるリナロール、防虫剤として使用される樟脳(カンファ―)などがあります。
EUでは濃度規制がされているα―ピネン
実はヒノキ材から多く放出されているαーピネン(杉材からも放出されています)は、シックハウス症候群を予防するために制限されるVOCに含むかどうかを議論された、という経緯があります。
・・・2つ目の苦情です。2時間ぐらい部屋に滞在したところ、顔がどんどん痛くなってきて、翌日、顔が赤く腫れ上がってしまったということでした。これは30代の女性からのお話です。床は杉のフローリング、天井と壁は火山灰を利用した塗り壁というもので、測定しますと、ほとんどテルペン類のピークしか見えず、いろんな種類のテルペン類が入っておりました。α-ピネンが一番高くて3,140μg/m3、そのほかもテルペン類が非常に多くて、TVOCとしましては17,300μg/m3という非常にすごい濃度でした。これは、メーカーの方と一緒に住宅のほうに入りましたところ、木のいい香りがするねという方もいらっしゃれば、ちょっとにおいが強過ぎて気分が悪いという方もいらっしゃいました。調査の間しばらく滞在すると、何だか喉痛い、目が痛い、頭が痛いという方が、やはり刺激的なにおいをある一定時間吸い込むことによっていろんな症状を訴える方がいらっしゃいました。
・・・におい的には非常に良いものであっても、ある程度濃度が高くなってしまうと、人は刺激を感じるということを考慮すべきではないかと感じます。
※厚生労働省が定めたTVOC(総揮発性有機化合物量)の暫定目標値は400μg/m3です。
また同資料によりますと、α―ピネンを含むテルペン類は空気中に非常に酸化されやすいこと、酸化によって刺激性の強いアルデヒドに変化することがわかっているため、EUでは人の呼吸器への刺激を考慮し、α―ピネンの濃度が定められているとのこと。しかし日本では、天然成分であるα―ピネンの濃度は規制されず今日に至っています。
昔と現代の住宅にある密閉度の違いが考慮されていない
ヒノキを使用している住宅メーカーでは、607年に創建されたと言われている奈良の法隆寺にヒノキが使用されていることからヒノキの耐久性の高さをよく宣伝に利用なさっていますが、上記の問題については説明がなされることはないように思います。
昔の建物は、屋内と屋外との境にあるものが障子戸であったり、床板に隙間があったりと、現代の住宅のように密閉された建造物ではありませんでした。
また、屋内のVOC濃度を下げる目的で設置が義務付けられた24時間換気システムですが、伝統的な工法である真壁造りや大臣が認定した一部の工法では設置が免除されています。しかし現代の真壁造りでは窓にガラスが入っていますし、壁や床に隙間は殆どありません。ですから予防医学の点からも、どのような工法であっても換気設備は設けた方が良いと言われています。
また、最も見落とされているのが、家を総桧などで作る場合があることである。桧からはα-ピネンと呼ばれる化学物質(桧の香の主成分)が発生するため、気密性能の高い家の場合は、この物質を含むいわゆるTVOC濃度が極めて高くなるにも拘らず、桧の香は自然のものだから無害であると信じている人がかなりいることである。自然であれ、人工であれ、化学物質は化学物質であり、ある一定レベル以上になれば健康に有害であることには変わらないということに気がついていない人が多いようである。したがって、総桧づくりとするのであれば、かつての気密性能の悪い住宅のとき確保されていた程度の換気量(おおよそ1回/h程度)を確保することのできる換気設備(できれば機械換気が望ましい)を装備することである。
引用元:「シックハウスはなぜ起こったか」財団法人神奈川県予防医学協会※現在は削除されています。
さらに、独立行政法人 森林総合研究所が作成した「木質建材から放散される揮発性有機化合物の評価と快適性増進効果の解明」によりますと、ヒノキは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド共に放散量が多かった事が記述されています。
厚生労働省が「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」において濃度指針値を定めた13物質
ホルムアルデヒド・アセトアルデヒド・トルエン・キシレン・エチルベンゼン・スチレン・パラジクロロベンゼン・テトラデカン・クロルピリホス・フェノブカルブ・ダイアジオノン・フタル酸ジ-n-ブチル・フタル酸ジ-2-エチルヘキシル
ヒバから放散されるヒノキチオールには毒性も
耐朽性があるとされ土台に好んで使用されるヒノキ科のヒバは、「森林の香り」などとして芳香剤などにも使用されているヒノキチオールを放散します。そしてこちらでも問題になるのが昔と現代の工法との違いになります。
昔の建造物では、土台にコンクリートは使用されておらず石の上に木が立てられ、床下はむき出しの状態でした。このような状態では揮発した成分はすぐに空気中に拡散し、人が高濃度のVOCを吸い込むようなことはありませんでした。ですから密閉度の高い現代の工法になるまでは、ある意味単純に建材としての特徴を考慮した使用方法で良かったのです。
実はヒバに含まれるヒノキチオールには、口内に使用した場合や、食品添加物として通常では有りえない量を口に入れた場合に以下のような症状が出ることがわかっています。
ヒノキチオール
歯周疾患治療剤として使用された場合の過敏症が報告されている。
歯周疾患治療剤として使用された場合の副作用として、
- ショック:血圧降下,顔面蒼白,脈拍の異常,呼吸抑制等。
- 中枢神経:振戦,痙攣等。眠気,不安,興奮,霧視,眩暈,悪心・嘔吐 等の諸症状の報告がある。
引用:「ヒノキチオール」SDS 純正化学㈱
以下はヒノキチオールを妊娠したマウスに投与した実験結果になります。
(結果)
- ヒノキチオール投与群で卵黄嚢血液循環不全の胚子が用量に相関して増加した。また,最高濃度の 12.5μg群では胚子の発育遅延傾向がみられ,その形態観察では顔部形成不全,尾端部での水胞形成を持つ胞子を認めた。
- in vivoの結果では妊娠母体数の減少および母体重の増加抑制が用量に相関して認められた。また560mg 群から胎児発育の遅延がみられ,死胚数も投与量に比例して増加した。胎児の外表観察では560mg 以上の投与群で口唇裂,口蓋裂,短尾,四肢減形成,多合指を持つ胎児が用量相関をもって増加した。
引用元:「天然添加物ヒノキチオールの催奇形性について」東京都立衛生研究所 毒性部※現在は削除されていますが、J-GLOBALで文献を確認することが出来ます。
現代では、床下の換気量は昔とは比べ物にならない程微量となっていますし、また中には我が家のように、基礎に通気層が無く、住宅部分と一体化した空間を持つ工法もあります。またさらには、夏は涼しく冬は暖かい床下の温度を利用するために床下の空気を屋内に循環させる工法もあります。そういった場合には、木材からだけなく、その他に使用される建材からのVOCも循環される、ということに注意する必要があります。(防蟻剤の使用は論外です)
またヒノキチオールは、芳香成分や抗菌成分として洗剤や芳香剤などの多くの日用品に、また食品添加物としても使用されていますが、天然成分だから絶対的に安心、ではないということを覚えていてください。特に妊婦や赤ちゃん、幼い子どもにとっては成分が強すぎることが多く、体調不良などによるぐずりの原因になっている場合があります。
次に天然の木材での注意点をご紹介いたします。
天然の木材でも加工過程に注意が必要
天然の木材と言いましても、一般的に流通している木材は輸入品になりますが、丸太として輸入された木材については薬剤散布・燻蒸処理が義務付けられています。また、国産材であっても防腐・防蟻、防虫だけでなく、難燃処理された木材までもがあります。
なお木材の乾燥方法にも種類があり、大きく分けますと、数年かけて行われる天然乾燥と、機械を使用し1~2週間程で行われる人工乾燥とがあります。(乾燥期間は方法により異なります)
少しでも建築費用を安くしたいと考えられる場合には、1日から3日程度で処理が終わる高温乾燥の木材も視野にいれる必要がありますが、高温乾燥させた木材の場合、木質の劣化による強度の低下や変質等が問題視されているだけでなく、化学物質過敏症患者の中には焦げ付き臭などを感じ、体調の悪くなる方がおられますので気を付けて下さい。
スギの葉枯らし乾燥
活えび(生きた海老)の輸送には杉のチップが用いられているのですが(他の種類の木では死んでしまうそうです)、喘息やアトピーだけでなく、シックハウス症候群患者や化学物質過敏症患者でも、昭和20年頃までは一般的に行われていた葉枯らし乾燥をさせた杉材ですと問題が無い、または健康を取り戻す方が多数おられるようです。
葉枯らし乾燥とは
葉枯らし乾燥とは,伐倒後一定期間そのまま林内に放置し,枝葉が黄変し, さらには赤く枯れるまで天然乾燥させるもので,一般に「アク抜き」あるいは 「渋出し」と称する特殊な乾燥処理法の一種である。
引用:「スギ葉枯らし乾燥 付加価値向上のために」徳島県
葉を残したまま置いておくことで、幹内に残っていた水分が葉から蒸散し乾燥が行われる、というものです。また3か月、長くは6か月もの間風雨にさらされ乾燥されていく最中にアク抜きが行われるという点が、VOCの観点からしますと最も大きな利点なのではないかと私は思います。
工期期間の短縮=コストダウンが屋内のTVOCが高くなる原因
全てが自然素材で家が作られていた昔、木材が材料として使えるようになるまでに長い時間がかかり、建て始めてからも1~2年の工期が必要でした。そうしますと人が住み始めるまでに建材から発散されるVOCの量は極端に少なくなります。
しかし現代では時間短縮の様々な工夫がなされており、在来工法であっても工期が半年と短いため、多くが自然素材で建てられた家であったとしてでも、TVOC濃度が高いために体調を崩す方が出てくるのです。そして犠牲者の多くは子供と、子供の世話をしているお母さんです。
いずれの工程でも、時間短縮が災いしているのです。しかし現実的なことを言いますと、良い材料を選べば選ぶほど、工期を長くすればするだけコストは上がっていきます。コストを気にせずに家を建てることが出来ればそれに越したことはありませんが、そうすることが出来る方は少ないでしょう。
どこかで折り合いをつけることがどうしても必要となるのです。
そしてその時には、家の形や見た目よりも、また広さよりも材質を最優先に考えられると良いと思います。これは、私の反省でもあります。
家は一度建ててしまいますと、通常は何かあったからといって建て替えることは難しいです。住宅ローンがある以上引っ越すこともできません。建材、工法については本当によく吟味なさって下さい。
子供達が健康に育つ家が沢山建ちますように。
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