シックハウス症候群を予防する|24時間換気方式の選び方
24時間換気システム、こちらは建築基準法の改正により、平成15年7月1日以降新築された建物に取り付けが義務化された、機械による換気システムになります。
その法改正がおこなわれた背景としましては、家の断熱性を高めるために結果として高気密化が進み、またその高気密化のため、屋内の有害な化学物質を自然に屋外に排出できない工法が増えたことで、屋内の有害な化学物質量が増え、また減らず、その化学物質により体調を崩すシックハウス症候群患者が急増したことにあります。
シックハウス症候群で起こる症状など
- 建材から揮発する化学物質によって、喉や目、手足の痛み、頭痛、視力低下、鼻水、鼻づまり、喘息、アトピー、うつ、集中力低下など人に(体質に)よってさまざまな症状が出ます。
- 特に、乳幼児や子供、女性、高齢者などは体外に有害物質を排出する能力が低いために症状が出やすいと言われています。
- 悪化すると、ほんの少しの化学物質にでも体調が悪くなる化学物質過敏症(CS)になることもあります。
- 化学物質過敏症(CS)になりますと、体調を悪化させないためには、働く場所や食事、日用品などを極端に制限する必要が出てくるため、日常生活を普通に送ることが困難となります。
24時間換気システムの導入は、建築業者側の負担を考慮した結果
そのあまりに増え続けるシックハウス症候群患者数に国として対応せざるを得なくなり、屋内の有害な化学物質の濃度を減らす工夫として24時間換気システムの義務化(真壁造や大臣認定を受けた一部の工法を除く)となったわけです。
この法律が施行されてからずいぶん経ちますので、24時間換気システムをご存知ない方は少ないのではないかと思います。
しかし残念ながらこの法律は、増え続けるシックハウス症候群患者=家で生活をする私たちを守ることより、建築業者側の負担が最大限に小さくなるよう配慮されたものだということを知っている方はとても少ないでしょう。
シックハウス症候群の原因は国はすでに知っています。
シックハウス症候群の原因は建材と日用品
平成15年7月1日から施行された改正法建築基準法のリーフレットに、シックハウス症候群の主な原因として、以下のように説明しています。
①住宅に使用されている建材や家具、日用品などから様々な化学物質が発散
ですので、シックハウス症候群の抜本的な対策としては、それらを使用しない、また販売しないように規制すれば良いのです。
ところが、建築業界からかなりの反発があったものと思われます。
まず、安全な建材=自然素材を使用し建物を建築する場合、建材も非常に高いですし、何より工期が倍以上に伸びますので建築業者からすればメリットが少なくなります。
しかし一番の問題は、戦後の復興や高度成長期に、とにかく早く家を建てて増やすため、合板などの新建材が多用されました。そのため、現在では規格化された建材しか取り扱ったことが無い建築業者が多くを占め、逆に安全な建材(自然素材)を取り扱える人材は極端に少なくなり、深刻な人手不足(技術不足)になっているのです。
そこで国は、建築業者側の負担が最小限となるよう、建築業者側には当時判明していた有害な化学物質の建材に含まれる濃度の規制だけにとどめ、引き続き人に有害な化学物質を含む新建材の使用を許可したうえ、施主側に24時間換気システムの設置を義務付けたのです。
ですので、我が家のように普通にF☆☆☆☆(エフフォー)建材などを使用し建築してしまった場合、最低でも、24時間換気システムによる1時間に0.5回の換気がきちんと行われる状態を保つ必要があります。それでも揮発量は換気量を大きく上回ります。
ましてや、隙間風が寒いと言って吸気口を塞いでいるかたもおられるようですが、これは危険ですのでやめた方が良いです。
化学物質の濃度上昇の他に、二酸化炭素濃度、湿度も上昇し、体や家に影響を与えます。
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24時間換気システムの3つの方式について
設置が義務化されている24時間換気システムですが、現在使われている換気のシステムは、大きく分けて3種類あり、それぞれに特徴があります。
その各換気方式の特徴メリット、デメリットをご紹介していきます。
シックハウス対策に何かお役に立てば幸いです。
第1種換気方式
吸気と排気の両方を機械で強制的におこなう方法です。
吸気量と排気量をきちんと設定することで、屋内は等圧になります。
現在は、1つの換気ユニットで吸排気をおこない、さらに外気の熱と排気する屋内の空気の熱を換気ユニット内で交換をする熱交換器がセットになったものが主流となっています。
そうしますと、夏はエアコンで冷やされた屋内の空気と外気が熱交換をおこない、外気より少し温度の低い空気が屋内に吸気され、冬は暖房器具で温められた屋内の空気と外気が熱交換をおこない、外気より少し温度の高い空気が屋内に吸気されることになります。ですので、熱損失を減らすことができます。
また、比較的気密性の低い住宅でも、(他の方式に比べて)安定した換気効果が得られるため、多くの住宅で取り入れられている換気方式になります。
また延床面積やシステムに寄るのですが、30~50坪程度で2階建てであれば、各階に1つで、1つの家屋に2つの換気ユニットまたは、1つの換気ユニットで換気をおこなっています。
ですから、定期的に交換するフィルタは1つまたは2つ分となります。
フィルターの交換手間を考えますと他の換気方式のように、各部屋の吸気口の清掃、交換を行わなくて済みますので便利かもしれません。
(ちなみに他の方式では30~50坪程度は換気ユニットは1つです)
ただ、デメリットもあります。
吸排気+熱交換を行う為にユニット代と電気代がほかの第2種、第3種に比べて割高となります。
また、通常月1回のフィルター交換も必要となるのですが、そのフィルター代も他の換気方式に比べて割高となっています。
なお、現在ではPM2.5の飛来量が多いため、1か月に1回の交換では目が詰まり、十分な換気量が保てないと思います。ですのでさらに割高感を感じておられるのではないかと思います。
さらに、換気ユニットから各部屋へはダクトを通して吸気をおこなっているのですが、どうしても換気ユニット内に設置したフィルターだけではPM2.5など、微細な粒子の除去は難しく、ダクト内を通って各部屋に届くことになります。
また、屋内に張り巡らされたダクトの清掃は個人ではなかなか難しく、ダクト内にほこりが蓄積した場合、部屋の吸気口からほこりが落ちてくることもあります。
さらにダクト内に溜まったほこりからカビが発生し、そのカビもほこりと一緒に各部屋に供給されることに。そのため、24時間換気システムを動かすと咳が出たり、最悪喘息にまで発展する方が増えてきています。
ですので、5~10年に1回ほど専門業者に清掃を依頼する必要があります。
なお清掃時期は、明らかに汚れてからではなく、ご家族の体調を見ながら先手を打っていかれた方が良いと思います。一度症状が出てしまうと完全に回復することは難しく、その後は一生、気を付けて生活を送る必要が出てくるからです。
そして料金ですが、ダクト数が他の換気方式の倍、吸排気各1本で2本×設置個所となります。ですので、20万程はかかるようです。(建物規模や設置方法による)
と言いましても、換気システム義務化以降数年程は「ダクトの清掃はできません」と、ハウスメーカー側にも言われるような状態でしたが、今では専門業者がいますし、業者数も増えてきました。
さらに、現在では24時間換気システムが導入された戸数もずいぶん増えましたので、経年と共にダクトの清掃依頼も少しずつ増えてくるでしょう。そうすればダクトの清掃料金も少しずつ下がってくるのではないかと思います。
第2種換気方式
吸気を機械によって強制的におこない、排気は自然換気でおこないます。
この方法では屋内はプラス圧となります。
ですので、出入り口のドアを開けても外からの空気の流入がないため、病院の無菌室や手術室などのクリーンルームに使われていた特殊な換気方式となります。
しかし、気密性能が低い住宅では、壁の隙間から屋外に水蒸気を含んだ空気が流れるため、冬季間に壁体内結露を起こす可能性があり、一般住宅ではあまり採用されません。
ただ高気密住宅であれば、壁体内結露の問題もあまりないでしょうし、逆に、天井裏や床下からの有害な化学物質を室内に呼び入れることが無いうえ、玄関扉を開けた時、外の空気が屋内に入る量を減らすことができるでしょうから、PM2.5や花粉症対策には良いのかもしれません。
また、薪ストーブを採用しておられる住宅では、他の方式では煙が逆流してうまく燃えないこともあるようで、換気方式をこちらの第2種換気方式になさっている方がいます。
ただ第1種換気方式でも暖炉の近くに専用の吸気口を設けたり、吸気と排気のバランスを調整できれば、暖炉の設置は可能なようです。
ただ第3種換気方式では、高密閉式の薪ストーブやペレットストーブなどでも、気密を保つように煙突を設置したり、燃焼開始時に換気システムを止め、窓を開けるなどして空気が入るようにしませんと、設置は難しいのかもしれません。
第3種換気方式
第3種換気方式とは、排気を機械で、吸気は自然換気でおこないます。
我が家ではこの方式になります。
簡単に言いますと、今までの家でも、台所やトイレ、お風呂などで換気扇を使い、局所換気をしてきましたが、第3種換気方式では各場所に換気扇を設置し換気を行うのではなく、各場所からダクトを通じ1つの換気ユニットで空気を吸い、屋外に排出する、という方式になります。
それは、大きな換気扇を使って屋内の空気を排出し続けるだけ、という方式ですので、当然屋内は負圧になります。そうして負圧になった屋内に、各部屋に設けられた吸気口(穴)から外気が自然に入ってくることになります。
ですので、気密がきちんと取れた第3種換気方式の家ですと、高齢者や小さな子供にはドアや窓が内部に引っ張られているため、重く、開けることが難しいことがあります。(ちなみにうちの子は、4歳近くになるまで開けられませんでした C値0.2)
また第3種換気方式では、屋内を負圧にし、居室に設けた決まった穴(吸気口)から空気を取り入れています。
そして屋内の空気は、台所やトイレ、お風呂などの水場から、ダクトを通じて換気システムに集められ、屋外に排出するという流れで計画換気(1時間に0.5回屋内の空気を入れ替える)をおこなっています。
ですので、気密がある程度取れていませんと、家の隙間から屋内に外気が侵入し、流れが上手くいかず、計画換気ができなくなるのです。
さらに空気の流れが悪くなりますと、各部屋の温度や湿度の差も大きくなります。そうであれば当然、外に出したい化学物質も流れの悪い場所に溜まることになります。
ですのでC値(隙間相当面積)が最低でも1.0以下であることが必要条件となります。
ただC値1.0以下にするには職人それぞれの技術も必要ですし、家自体のコストも上がりますので、第1種換気方式を採用するハウスメーカーが多いです。
ただ第1種換気方式を採用しているハウスメーカーでも、C値0.7などの高気密住宅を作ることのできるハウスメーカーも当然あります。そうしたハウスメーカーの住宅は、第3種換気方式以上に、屋内に温度、湿度のムラがとても少ないため、じつに快適な生活を送ることができます。
ただドアや窓は、気密がきちんと取れ、第3種換気システムを採用した住宅のように重くなります。しかし気密値はそう高くありませんので、子供が開けられないような重さではありませんでした。ですからそんなに問題は無いと思います。
なお、第3種換気方式「以上」と申し上げたのは、第1種換気方式では各部屋個別に吸排気をおこなっているため、第3種換気方式に比べ、温度、湿度ムラが少なく感じたからです。
しかし我が家は最終的に第3種換気方式を選びました。
それは第1種換気方式に比べてランニングコストが低く、さらに個人でできるメンテナンスの幅が広かったためです。
第1種換気方式の換気ユニットに使用されるフィルターは専用品でないといけませんし、とても高価です。そして換気ユニットから各部屋に設置された吸気口へ伸びるダクトの掃除は個人では無理ですが、定期的に専門業者に頼み掃除をおこなったとしても、ある程度のハウスダストは経年とともにダクト内に溜まり、各部屋に供給されることになります。
さらに電気代は1機で第3種換気方式の2倍ほどかかります。また、住宅メーカーによっては換気ユニットは2機設置されます。
住宅を高気密にする必要性
いずれにせよ、これからの時代は家がシェルターの役割を果たす必要性が出てきています。
ですので、きれいな外気だけを屋内に取り入れ、さらに屋内の空気を計画的に換気をするためには住宅を高気密化せざるを得ない状況なのです。
その必要が無い世界が一番良いのですが、そうも言っていられない世の中になってきました。
ただ高気密住宅にしますと、建材や建具、そのほか自分たちで持ち込んだ様々な化学物質は、換気システムによる換気でしか外に出ていきませんので、有害な化学物質を含んだ建材や物を使わない、持ち込まない努力が必要となります。
と言いましても、現在の新築住宅はC値5以上は無いですし、どの工法でも防湿防水シートに覆われています。簡単に言いますと家がビニールに覆われている状態ですので、自然換気はまず望めません。
ですから、高気密住宅と同じように努力する必要があります。
給排気口位置や場所を考える
長々と書いてきましたが、家(シックハウス)を建て気が付いたことを少しご紹介します。もしこれから家を建てられる方がおられましたら、参考にして頂けますと嬉しいです
吸気口の位置は隣家の排気口に面していない場所に設けるべき
吸気口の位置ですが、隣家の排気口に面していない場所に設けるべきでした。
しかし、第3種換気方式では各居室に吸気口を設ける必要があるため、難しいのです。
ところが、第1種換気方式であれば、延べ床面積に寄りますが、屋外には1つまたは2つしか吸気口がありません。そして、その吸気口の位置をある程度自由に決められますので、隣家が屋内から排出した有害物質を我が家に取り入れるリスクを最小限に減らすことができます。
各収納、パソコン周りに排気取り入れ口を設置
各クローゼット内や下駄箱内に排気取り入れ口を付ければ良かった、と後悔しています。
なぜなら、空気の入れ替えは自然には難しく、どうしても有害物質が溜まってしまいます。ましてや、「物」からは大抵揮発成分がありますので、何かと濃度が高めになるのです。
そして、パソコン周りにも必要でした。パソコン本体、プリンターなどはどうしても揮発する物質が多いと思います。
排気取り入れ口の位置を低く
排気口の位置は低い位置に設置すればベストでした。
なぜなら、有害な化学物質は床上に溜まることがわかっているからです。
ですので、シックハウスの原因となる化学物質の測定を行う時には、VOC濃度が床上よりも低い、床上1m20~50cmという高い位置でおこなわれるのです。
床上に子供がいることが多い保育園や学校でも同じ測定方法です。
今から建築される方は排気取り入れ口の位置を床上近くに持ってくることが出来ればより安全な家になります。
最後に
私は家を建てるとき、宣伝されている良い面ばかり見ていたために見事にシックハウス症候群になり、その後悪化し化学物質過敏症(CS)になってしまいました。
私に関しては自業自得なのですが、子供はそういうわけにいきません。
今となっては遅いことも多いのですが(構造からリフォームは難しいですから)まずは新建材の使用を減らす努力が必要だったということを強く伝えたいです。
そのうえで上記でご紹介させて頂きました各換気システムのメリット、デメリットを考慮のうえ、家族を守る家を建てられて下さい。
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